2008年10月15日

「白の闇」ジョセ・サラマーゴ

 ノーベル賞作家、ジョゼ・サラマーゴ原作「白の闇」が映画化され、

11月に公開予定。

 原作本を手にしてびっくりした。

 登場人物の会話なのに改行もしていないし、かぎ括弧もない。ただた

だ長いセンテンスの中に会話が入っている。誰の発言かは分かるように

していあるけれど、だらだらした文章(だと思ってしまったので)だっ

たら、読みづらいかもしれない。翻訳はそれだけでも訳者の力量があら

われる。映画化されるから映画で見てもいいし・・・と安易なほうに流

れそうだったが読んでみたら、面白かった。

 ページをめくってもめくっても何行にもわたる文章がただあるだけな

のに内容がすさまじい。

 ある日突然、一人の男性が視力を失う。その男性と関わった人たちが

次々と視力を失う。しかも目の前が真っ黒ではなく真っ白になる。霧の

中をさまよっているような白の闇。

 どの登場人物にも名前がなく「眼科医」「その妻」「若い女」「最初

に視力を失った男」などと言い表される。名前に意味のない世界。名前

があったとしても他者には姿も見えないし、アイデンティティは本人に

は大切でも他者から見れば吹けば飛んで行きそうなくらい軽いというこ

と?

 政府は視力を失った人間を施設に隔離するが、感染力が強くあっとい

う間に満杯。そしてそこで目の見えない人たちのすさまじい権力闘争が

始まる。

 実は、視力を失った眼科医が隔離されるときにまだ目が見えた妻は自

らも視力を失ったふりをして一緒に隔離されるが、不思議なことに彼女

は最後まで視力を失わず、彼女の目を通して情景が淡々と述べられる。

 何故、彼女だけが失明しなかったのか、未だもって分からない。

 この作品、目の見えない人が読んでどう思うだろう?ということもず

っと気になっていた。

 一筋縄ではいかないものが秘められていて、そこに石を投げ入れる作

者だからノーベル文学賞を受賞したのかもしれない。
posted by ほたる at 22:22| Comment(0) | TrackBack(1) | 読んでみたら | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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『 あらゆる名前』 ジョゼ サラマーゴ (著)
Excerpt: 孤独な戸籍係による奇妙な探求―人間の尊厳を失った名も無き人の復活劇!ポルトガル語圏初のノーベル賞作家による異色作。
Weblog: Anonymous-source
Tracked: 2009-03-11 14:44
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